2009年、株式会社サイバーエージェントがリリースしたアメーバピグ(仮想空間にて、ユーザーがキャラクター『ピグ』を通して他のユーザーと会話したり、ブログを閲覧したりすることができるサービス)は、開始4ヶ月半でユーザー数が50万人を突破、2010年1月時点では約200万人となった。
また、2009年12月には、Amebaなうをリリースするなど、その勢いは止まらない。
次々とサービスを創り出し、支えることのできる組織がどのように運営されているのか。
組織・技術を向上させる仕組みについてアメーバ事業本部を統括する長瀬氏にお話いただきました。
株式会社サイバーエージェント 新規開発局 局長 アメーバ事業本部 ゼネラルマネージャー 長瀬慶重氏 2005年8月に株式会社サイバーエージェントに入社。 入社後は、Amebaブログをはじめ、Amebaの新規サービスの開発を担当。現在は、Amebaのメディア開発の責任者を担当。 また、同社 新規開発局 局長として、140名を超えるエンジニア、クリエイターを束ね、”技術のサイバーエージェント”の実現に向けて日々奮闘中。
流行るWebサービスに必要な3つの要素
Amebaのサービスは、PCは約2000万人、モバイルは約1300万人のユーザーが訪問している(2010年1月時点)。 長瀬氏は、「Amebaの強みのひとつにタレントブログがあるのですが、運営組織の中にいわゆる芸能事務所さんに対して営業をする部門があり、事務所さんとの信頼関係を築いた中でブログの良さや可能性を伝えていく活動をしているんですよ」と語った。
現在、一番力を入れているアメーバピグは、200万人の会員がいるという。ブラウザーベースの2D仮想空間で、1日の滞在時間1時間、アクティブユーザーが月10日間遊びにくる。 概算で600分程遊んでいると言われる話題のサービスだ。 そして、2009年12月にはミニブログサービスAmebaなうをリリースしている。
長瀬氏は、流行るWebサービスに必要なのは ①戦略 ②テクノロジー ③プロモーション の3つの要素だと語る。
①戦略 要は目のつけどころが重要だということ。アメーバピグを始めるにあたっての現場ベースでの発端は、「純粋に今風にチャットを作ったらどういうサービスができるか」ということ。また、事業ベースでは「アイテム課金のマネタイズのサービスを作りたい」ということだった。そこで重要な焦点になったのは、「ターゲットユーザーをどこに置くか」。最終的には“全てのネットユーザーが使える”、“とにかく簡単で使いやすい”というコンセプトで、戦略からひとつひとつブレイクダウンし、どう作り込むかを心がけた。その結果、あまりネットリテラシーの高くないユーザーにも楽しんでもらうことができるようになり、当初の戦略がある程度当たったと語る。
②テクノロジー テクノロジーやクリエイティブこそが、実際にそのサービスに命を吹き込むもの。 分散のデータベースをスクラッチで開発したり、Atomを使った自作サーバの大規模導入をすることで、実はアメーバピグの初期構成については、300万位で全て組み上げている。 大規模な開発で、Flashのディベロッパーがお互いの開発を邪魔せずに開発を効率よく進める為のフレームワークを探したところ、その時点で世の中には無かった。 その為独自のDIコンテナを作り、データをモジュール化することで、Flashのディベロッパーが何人か直接的に並列した状態で開発するという形を取った。 これはグローバルでみても事例として少ないと自信を持つ。 今回、アメーバピグの開発で得られた大きな成果と言える。
③プロモーション サービスをユーザーが具体的にイメージできるプロモーションとセットでユーザーに伝えること。 押し付けないプロモーションが前提である。 媒体を介してユーザーさんに楽しさや使い方を伝えていくこともサービスを運営している側の責任。ここには会社として非常に力を入れている。 なによりサービス自体は、“基本的に全スタッフで創る”というのが今の組織の考えであり、社長藤田氏を含め、開発メンバーがプロモーション、広報も含めて、皆で考えるスタンスをとっている。
自由と自己責任が組織・技術を成長させる
技術を伸ばすために、組織では“自由と自己責任”この2つを重視し、5つのルールを設けている。 ①新しいサービスや技術に取り組まない姿勢は悪 ②自由の代わりに自己管理を徹底する ③自分が創った設計・開発に責任を持つ ④採用に全力を尽くす ⑤主体性がないと会社自体で生き残れない
技術者にとってのサイバーエージェントの魅力は①テクノロジーのイノベーションを感じる大規模なトラフィックを扱う成長機会があり、②比較的ネット企業の中でもドメインを絞っていないことである。 PC・モバイルなどのプラットフォームしかり、国内外それぞれでサービスの開発を行う機会があり、新規サービスの立ち上げに企画から運営まで関わるところが成長の機会になると語る。 また、③コストを含めて現場に裁量権を与えており、例えば「この企画をシステム開発まで含め500万円で自由にやって下さい」という風にシンプルに現場に渡すことで、技術者はやりがいを感じるという。
組織がある程度大きくなったことで、④基礎研究、要素技術の研究にある程度投資することが可能になった。これも新たな成長機会となり、メンバー、社内の活性化に繋がっている。例えば、業務に直接関係のないiPhoneや新しいデバイスの取り組み、その成果を最終的にレポートして評価する研究評価制度。 基礎・要素の技術研究の学会における発表等。また、社内でのアプリコンテストに賞金を懸けたり、純粋にAmebaのサービスを技術者が自ら企画を立案して最終的にサービスに落とし込んでいったりしている。それが技術を伸ばす仕掛けの秘策と述べた。 また、それ以外に業界活動も積極的に行う。 MDBフォームへの参加やアドビマックスでの講演など、自分たちの持っている技術を世の中に提供していき、知り合った技術者・クリエイターと情報交換するという。 実際MySQLやActionScriptに関しての書籍も出版している。
最後に長瀬氏は、「現場の技術者もサイバーエージェントのカルチャーが好きで入社をしています。技術に明るくないというイメージもあるかもしれないが、実際は現場には技術がある。その環境で技術をどう育んで楽しいものを創っていくかと、日々切磋琢磨しているというところです。」と語った。 次世代WEBサービスで次々と成功を収める組織の秘訣“自由と自己責任”は、組織の成長を更に加速させているのかもしれない。
また、エンジニアの退職率は現在2%と、そこで働く人材の満足度も表している。同じWeb関連業界に在籍する参加者にとっても、非常に興味深い内容となった。
- 講演「Ameba(アメーバ)を支える技術と組織の秘密」
- パネルディスカッション「WEBサービスへの期待」(前編)
- パネルディスカッション「WEBサービスへの期待」(後編)
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